世界中を飛び回り、英語でプレゼンを披露し、クライアントと握手を交わす…
そんなキラキラしたイメージが先行しがちな海外営業ですが、実際のところ仕事内容はどんな感じなのか?
やっぱりみんな英語ペラペラなんですかね?
みんな英語力にとらわれすぎて語学意外に必要なスキルを見落としてませんか?
当然、海外の人とコミュニケーションが要求される海外営業の仕事に英語(もしくは中国語)は必須です。
ところがTOEICスコア800点超えでも海外営業として評価されない人もたくさんいます。
一方で私は、TOEICたった600点でも新卒から海外営業に配属されることに成功しました。
そんな経験から海外営業になるは語学スキル意外に何が必要か?という疑問にこの記事で答えます。
ぶっちゃけ英語力よりも会社選びの方が重要かもしれません…
海外営業の仕事内容をおさらい
海外営業になるにはどんなスキルを身につければいいのか?
その疑問を紐解くために、まずは海外営業の仕事内容をきちんと理解することが重要です。
実は海外営業の仕事内容は会社や組織によって全く異なります
会社によっては英語を全く使わない海外営業もいるくらいです
私は転職も挟んで複数の企業で海外営業の仕事のパターンを実際にこの目で確認してきました。
それぞれのパターン別に、国内営業との違いにも触れながら解説します。
知っておくべき5パターンの仕事内容
まずは海外営業の仕事内容を5つのパターンに分けてそれぞれの特徴を解説します。
1.海外の顧客を相手に営業する
一般的にイメージされる海外営業に一番近いのが海外顧客向けに直接モノ・サービスを販売する営業です。
- 英語で海外の顧客にプレゼンをして製品をPRする
- 価格や納期など海外の顧客相手に交渉する
- 受注した際に英文の契約書にサインを交わす
英語を使う機会もたくさんあり、出張も多いのでハード且つ質の高いビジネススキルが求められます。
2.海外営業の販売支援をする
海外にモノやサービスを販売する際には様々な事務作業が発生します。
- 輸出・輸入にかかる貿易実務
- 信用状(Letter of Credit)を用いた支払い
- 輸送中に事故が起こった際の保険請求
これらの販売にかかるサポート業務を海外営業が担うこともあります。
「顧客と交渉する担当者」と「販売支援する担当者」が分かれることが多いです
大企業になると販売支援的な業務は派遣さんが担ってくれることもありますね
ただし、規模の小さい企業だと「顧客との交渉」と「販売支援」を1人の担当者が担うこともあるので仕事がハードになりがちです。
3.商社を相手に営業する
海外の大型プロジェクトに商社(メインコントラクター)の下請けとして参加する場合、その商社に対する営業活動を海外営業が担うことがあります。
その場合、商社は日本の企業なので仕事内容は国内営業とほとんど一緒です。
海外営業でも国内営業的なスキルが求められるのはこういう理由なんですね
ODA(政府開発援助)などの国際的なプロジェクトを商社と一緒に取り組むこともあります
条件にもよりますが、製品を国内の商社に引き渡して契約クローズする場合は英語もほとんど使いません。
4.海外現地法人の販売支援をする
海外に現地法人がある場合は日本にいる海外営業マンの役割は相対的に少なくなります。
- 日本の工場で製造したものを海外現地法人に売る
- 本社の販売方針やマーケティング戦略を現地スタッフと共有する
- 売上目標を管理して進捗が悪い場合は販売施策を検討する
特にメーカーはこのような海外営業が海外現地時法人の販売支援の役割を担うことが多いです。
仕事内容的には営業というよりも営業企画に近いですね
現地スタッフとのコミュニケーションは英語なので英語を使う機会はそこそこあります
ただし、日本人の駐在員がいる場合は英語を使う機会が少なくなるかもしれません。
5.海外の代理店を相手に営業する
海外現地法人がない国への営業活動は現地の代理店が担ってくれます。
それらの海外代理店とのコミュニケーションも海外営業の仕事です。
基本的な仕事内容は「海外現地法人への販売支援」と変わりませんが、重要なのは代理店はあくまで社外の組織だということです。
利害が完全には一致しない相手のモチベーションをいかに上げられるかが課題です
海外現地法人ほどは融通が利かない分、交渉力や管理能力が求められます。
国内営業との違いは?
海外・国内問わず、営業の仕事は大まかに以下のような流れで進んでいきます。
これらの基本ステップは一緒ですが海外営業と国内営業では求められるスキルや守るべきルールが全く違います。
名刺交換のやり方だけ見ても日本の商習慣って独特なルールが多いですよね
仕事内容の違いではなく「求められるスキルの違い」に着目して比較してみましょう
例をあげるとキリがありませんが、特に意識するべきは以下の3つです。
A.周囲との調和 vs 結論ファースト
名刺交換、エレベーターの立ち位置、会議の座り位置、接待での作法…
などなど国内営業の場合は顧客とのコミュニケーションにおいて周囲との調和に重きを置きます
一方、海外営業は国内営業とは違い結論ファーストなコミュニケーションを重視します。
- 背景説明はいいから誰がいつまでに何をするのか結論を示して
- 謝罪はいいから代替案とそれぞれのメリット・デメリットを示して
- できないならできない、条件付きでできるならその条件とは?
海外営業ではとにかく結論を先に明確にしないとコミュニケーションが進みません。
また、周囲に気を使って自己主張をしないと何も考えていないと思われるので注意しましょう。
B.人間関係 vs 契約関係
国内営業では接待などで顧客と長期的に良好な関係を築くことが重要とされています。
- そこを何とかお願いできませんかね…
- どうか長い付き合いのよしみで…
- この件は貸しということで…
と、国内営業では何か不測の事態が発生した場合でも長年培った人間関係が解決につながったりします。
一方で海外営業の場合は契約書に書かれている内容が全てです。
例えプライベートで仲の良い相手でも、ビジネスにおいては契約で合意した内容を重んじます。
よく言えばメリハリがきいていますが悪く言えば融通が利かないといえるかもしれません。
C.ファミリー感 vs ビジネスライク
国内営業と海外営業とでは社内での雰囲気も異なります。
- 飲み会で上司との良好な関係を築くと仕事がしやすい
- メールで送るよりも電話や対面での報告を重視
- 特に報告事項がなくても定期的に会議を開催
国内営業の社内コミュニケーション上下関係や社外での人間関係を重視する雰囲気がありました。
一方の海外営業は成果さえ出していれば必要以上の付き合いは不要というスタンスが強いです。
国内営業と比べて飲み会も少ないしゴルフをする人もほとんどいなかったです
ファミリー感はないけど、サバサバした環境で仕事をしたい人にはおすすめだね
残業についても「同じ成果ならなるべく時間をかけなかった方が効率がよいと」評価してくれるので個人的にはワークライフバランスも取りやすくて助かります。
海外営業に必要なスキルとは?
国境を越えてビジネスを成立させる上で重要なのは「正確な意思疎通すること」です。
ところが海外の人との意思疎通には多くの壁が存在します。
- 言葉をはじめとするコミュニケーションの壁
- 国境や法規制などの手続き上の壁
- 宗教や教育に起因する文化的な壁
メールや電話だけで意思疎通を図るのは難しいですよね…
仮に英語がペラペラでもそれだけじゃ全ての壁を乗り越えるのは不可能じゃないかな
私自身も多くの海外営業マンと接してきましたが、優秀な人とそうでない人の差は英語力ではありません。
では具体的に優秀な海外営業に必要とされるスキルとはどんなものなのか?
英語以外の7つのスキルについて紹介します。
海外営業に必要な7つのスキル
海外営業に必要なスキルは以下の7つです。
① 合理的な思考力
海外の人と交渉するときに「熱意」を伝えても意味がありません。
- どうしてそれが必要なのか?
- 両者にどのようなメリットがあるのか?
- それを選択しないことが顧客にとってなぜ損なのか?
これらの相手の利益を具体的かつ合理的に言語化するスキルが求められます。
同時に具体的な数値やデータを分析して示すことも重要です。
② 文章の読解力・作成力
海外営業と聞くと外国人に対して流暢な英語で会話する人をイメージするかもしれません、
でも実は海外のビジネスでは会話力よりも文章力を重要視しています。
- 約束した納期が遅れた場合はどのように責任を負うのか?
- お金はいつまでにどのような方法で支払われるのか?
- 万が一、大規模な地震が発生した場合の対処法は?
このような不測の事態はすべて契約書の規定に従って解決する必要があるからです。
また、言った言わないの争いを避けるためにコミュニケーションは電話よりメールが大事で、重要な会議は都度議事録を作成します。
③旺盛な好奇心
日本の市場が縮小する中、会社が海外営業に期待するのは新しい市場の開拓です。
- 前例の無い案件にどれだけ意欲的に取り組めるか?
- 付き合いのない顧客と如何にしてゼロから関係を築けるか?
- 新しいことに後ろ向きな社内の関係者をどう説得できるか?
このような海外営業のミッションは好奇心旺盛な人でないと務まらないものがたくさんあります。
指示を待つよりも進んで提案できる人材になりましょう。
④ 貿易実務の知識
メーカーのようにモノを輸出・輸入する場合は貿易実務の知識も不可欠です。
例えば商品を海外に送る途中で船が台風に巻き込まれて沈没してしまった場合、誰がどのように損害を負うのか?
このような責任範囲や危険負担はインコタームズという国際基準に則って判断されます。
インコタームズ(Incoterms)とは、1936年、国際商業会議所(ICC)が制定した貿易取引条件とその解釈に関する国際規則です。それ以前は、貿易取引条件の解釈がそれぞれの国で異なり、しばしばトラブルの原因となっていたため、これらの誤解や行きちがいを回避する目的で制定されました。商慣習の変化に伴って、数次の改訂が行われ、2020年1月1日発効の「インコタームズ2020」が最新版です。
引用元:JETRO-“インコタームズ2020”
貿易実務の知識が入っているかどうかで契約交渉を有利に進められるかどうかの差がつきます。
⑤ 異文化適応力
ヨーロッパ・アメリカ・アジアなど、地域によって文化や価値観はそれぞれ異なります。
- 合理性を重んじる傾向のあるヨーロッパの人たち
- 相手への見返りを示せないと動いてくれないいアメリカの人たち
- 頑固で自己主張が強い中国やインドの人たち
彼らと同じ土俵で渡り歩くには異文化に適応しようと努力をしなければなりません。
時には「日本でこんなこと言ったら失礼だ」という場面でもガンガン主張することを求められます。
⑥ ITリテラシー
時差や物理的な距離を越えて仕事をするにはITツールを使いこなして業務を効率化することが不可欠です。
- エクセル関数を使ったデータ集計
- ZoomやTeamsなどビデオ会議システム
- クラウドを利用した資料の共有
残念ながら、日本のサラリーマンは海外と比べてITリテラシーが低いことが多いです。
先進国のみならず中国やインド、東南アジアの人たちにもITリテラシーで差をつけられないよう気をつけましょう。
⑦ 臨機応変能力
例え入念に段取りしていたとしても予定通りにいかないことの方が多いのが海外営業というもの…
そんな海外営業の腕の見せ所はトラブル発生時に合理的な妥協点をすばやく見つけ交渉に持ち込める臨機応変能力です。
- 不測の事態が発生した原因と責任範囲は?
- 契約書に書かれている条件は?
- これまでの打ち合わせで残した議事録やメールなどのエビデンスは?
これらを過去に遡ってかき集めて交渉に挑む決断と度胸で海外営業の真価が問われます。
海外営業に向いていない人の特徴
せっかく狭き門を突破して海外営業になれてもチャンスを活かしきれない人もいます。
- 念願の海外営業になれたのになかなか活躍できない
- 長年海外営業をやっているのに出世できない
- 英語がペラペラなのに成果をあげられない
英語や貿易実務などのスキルがあっても上手くいかない原因は何なのでしょうか?
経験上そういう人たちにはいくつか共通する特徴があったね
私がこれまで見てきた海外営業に向いていない人には共通する3つの特徴をまとめました。
英語を習得する忍耐力がない
どんなに優秀な人でも英語の習得は一朝一夕にはできません。
- 継続的に英語を使う環境に身を置く
- テキストや単語帳を使って日々学習する
- 定期的にTOEICを受験する
このように就業外の時間を使ってでも学習を継続する覚悟と忍耐力がない人に海外営業は務まらないかもしれません。
下手な英語のまま放置していたら海外の人からも「この人は向上心がないんだ」と認定されてしまいます。
プライドが高くて失敗できない
帰国子女や留学経験者でもない限り、最初から英語がうまく話せる人なんていません。
私も、今思い返しても悔しさがこみ上げてくるくらい多くの恥をかきました。
- 何も話せないまま会議が終わってしまった
- 英語が通じず相手が終始イライラした態度だった
- 聞き取れていないのに知ったかぶりしてしまった
こういった失敗を繰り返して恥をかく耐性がない人は海外営業をやってもすぐ挫折する傾向があります。
プライドを捨てて「英語ができない」という事実に真摯に向き合えるかが重要です。
外国人を見下している
日本人の中にはアジア・アフリカ・中南米など途上国の人を無意識に見下している人が一定数います。
- 日本がアジアでナンバーワンの国だ!
- 途上国の人は先進国に比べて教養が低い!
- ○○人はこれだから手に負えないんだよ!
と、途上国の人を対等なビジネスパートナーとして尊重できない人は海外営業に向いていないです。
確かに海外の人と仕事をしていると、時間にルーズでだったり約束を平気で破ったりして思い通りにいかないことが多々有ります。
それでも文化や価値観の違いをすり合わせながら一つの目標に向かって根気よく進むのがグローバル人材が果たす役割です。
「○○人は使えない」とレッテルを貼って建設的な関係性を築こうとすらしない人は海外営業は諦めるべきでしょう。
最短で海外営業になるには?
海外営業は優秀な人(エリート)じゃないとなれない職種なの?
年齢が高くなってからでは海外営業を目指すのは難しい?
帰国子女でもなく留学経験もない人は海外営業は諦めるべき?
いいえ、そんなことは全くありません!
学ぶ意欲さえ失わなければ何歳からでも海外営業になれます
海外営業の人が他の職種と比べて特別優秀というわけでもないですし
もちろん外国語の習得は不可欠ですが、帰国子女や留学経験者と比較して引け目に感じる必要はありません。
海外営業になるには「自分でも海外営業になれそうな環境に身をおくこと」が実は最も手っ取り早いです。
現に私はこの作戦で帰国子女でもないのに新卒から海外営業の座に就くことに成功しました。
海外売上比率の高い企業を狙え
海外営業になりたい人が企業研究をする上で最初に着目すべきはその企業の海外売上比率です。
当然、海外売上比率が高ければ高いほど海外営業になれる確率が上がります
中には海外売上比率が80%を超える企業もあるよ
例えば日本の製造業の海外売上比率はおおよそ30%台後半から40%程度くらいを推移しています。
調べてみると自動車部品メーカーや工具メーカーなどマイナーな企業で海外売上比率が高い穴場が結構見つかります。
興味のある求人を見つけたら、先ずはその企業の決算資料などを見て海外売上比率をチェックしてみてください。
事業計画における海外市場の展望は?
仮に海外売上比率が低くても、海外営業になれる道はあります。
特に中長期の事業計画で海外市場拡大を明言している企業は英語が苦手な人にとって大きなチャンスです。
事業計画は株主に向けたメッセージだから強い覚悟をもって推し進める期待があります
しかも元々の海外売上比率が低いとグローバル人材が不足している可能性も高いです
そういう企業ではTOEICスコアを取得して粘り強く希望を出し続ければ必ずチャンスが回ってきます。
また、営業未経験でも最初の2-3年を国内営業で過ごしてから異動の機会を与えられるかもしれません。
TOEICの最低ラインは600点
最後に、一番気になる英語スキルの指標について自身の経験を基に解説します。
海外営業になるには最低でもTOEICスコア600を持っておくことをおすすめします。
高いスコアではあるけど、手の届かないレベルではなさそうですね
600くらいなら留学経験がなくても自学自習で狙えるスコアですよ
新卒当時のTOEICスコア600点だった私を1年目から海外営業部に配属してくれたのは以下の3つの特徴を持つ企業でした。
- 売上規模が小さく知名度も低い中堅メーカー
- 当時の海外売上比率は30%以下
- 中期経営計画で海外市場の拡大を宣言
はっきり言ってTOEIC600程度では全く英語もしゃべれず恥もたくさんかきました…
でも今はTOEICスコア900以上をマークし、海外売上比率80%以上の大企業への転職も果たしました。
例えスタート地点は理想とかけ離れていたとしても、日々努力を重ねていけば理想のキャリアに近づけます!
海外営業になるには「戦略」を持つべし
言葉の壁、文化の壁、法規制の壁…
海外営業になるには様々な壁を乗り越える必要がある一方、乗り越えた先には幅広い知識と経験といったメリットがたくさんあります。
国内市場が縮小する日本において海外営業スキルはこれからますます貴重になります
既に転職市場でも海外営業の求人の方が国内営業より圧倒的に多いです
海外営業になるには海外売上比率の高い企業や海外市場の拡大を目指す企業にもぐりこむことが一番の近道です。
英語力や営業スキルはあとからどうにでもなります。
帰国子女じゃなくても、留学経験がなくても、年齢が高くても、現在のスキル・経歴にあわせて戦略的に海外営業への道を設計しましょう。
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