私は新卒でメーカー営業としてのキャリアをスタートしました。
- 仕事の成果が会社の売上・利益に直接つながる
- 目に見える「モノ」を顧客の手に届ける
- 自分の関わった製品が世に出て誰かの役に立つ
そんな営業の仕事にやりがいを感じ、初めて自分の力で受注したときは感動を覚えたものです。
ところが、そんな日々は長く続きませんでした…
自社製品を売ることに罪悪感を覚えるようになったのはいつからだったか?
営業経験を積んでいくほど自社製品のダメなところや他社製品の強みに気づいてしまいました…
ユーザーに十分な価値を出来ていないことがわかったとき、営業はどう向き合えばいいのか悩みますよね
自分が顧客の立場だったらこの製品を買うか?という問いに「Yes」と胸を張って答えられない…
普段からこのような葛藤があった私は、2019年にかんぽ生命の不適切販売が問題になったときも他人事とは思えませんでした。
会社の利益とユーザーの利益を天秤にかけたとき、自分だったら厳しいノルマや上司からのプレッシャーを押しのけてでもユーザーの利益を優先できるか?
自身の経験を基に売りたくない製品を売らなければならない局面での対処法について解説します。
ただ転職を考えるだけでなく、多角的に状況を分析してから最適な道を選択しましょう。
売りたくない製品を売る罪悪感の正体とは?
本来、「会社の利益」と「顧客の利益」は天秤にかける必要のないものです。
つまり、自社製品を売ることに罪悪感を覚えるのは「何かがおかしい」ことを意味します。
顧客に価値を提供して利益を得る「会社のあるべき姿」と矛盾していますよね
この違和感の正体を突き止めることが先ずは重要だよ
自社製品を好きになれない原因は大きく分けて2種類あります。
- 主観的に「好きじゃない」と感じるケース
- 客観的に「良くない」と感じるケース
自分がどちらのケースに該当するのか、先ずは冷静に把握しましょう。
主観的に「好きじゃない」と感じるケース
営業をしていると、どうしても隣の芝が青く見えてくることがあります。
- スペックは同等のはずなのに他社の方が販売数をのばしている…
- ライバル製品の方がオシャレでかっこいいデザインに見えてしまう…
- 似たような商品なのにどうして競合の価格は安いんだろう…
このように営業は「自社製品に自信が持てなくなる」のをきっかけに「好きじゃなくなる」ことが非常に多いです。
「売らなければいけない」というプレッシャーから嫌いになってしまうこともありますよね
その場合は必ずしも「自社製品が劣っている」というわけではないかもしれませんね
価値観は多様なので、全てのユーザーが100%満足する商品を作ることはできません。
また当然、「自分だったら買わない」という製品でも他の誰かにとっては価値がある可能性もあります。
どうしたらもっと自社製品のことを好きになれるのか?
主観的に「嫌い」と決め付けてしまっている場合は売らなければいけないという義務感から離れて製品の魅力を探ってみましょう。
客観的に「良くない」と感じるケース
「嫌い」という感情よりも深刻なのは売ることに罪悪感を覚えてしまうケースです。
- 契約してもらうために不必要に「顧客の不安」を煽らなければならない…
- 品質問題やデメリットなど「事前に伝えるべきこと」を隠している…
- ノルマ達成のために「買う必要がない人」にまで営業している…
このように後ろめたいことを隠しながら売りたくない商品を売ることは精神的に大きなストレスになります。
「人の役に立ちたい」という正義感が強い人ほどこれらの悩みを抱えてしまいます
もちろん、談合や誇大広告などの違法行為に関わることは絶対にやめましょう!
但し、多少の不安を煽ったりメリットを誇張することは「潜在的な需要」を掘り起こすのに必要なことかもしれません。
重要なのは「どこまでを営業活動として許容できるのか?」と自身の線引きをすることです。
自分を騙して売り続けた営業の末路
自社製品を売ることが本当に顧客の要望を満たす手段なのか?
そのような疑問を持ちながら売りたくない製品を売り続けた営業の末路は主に以下の2種類です。
- 罪悪感に押しつぶされてメンタルを病む
- 罪悪感が麻痺してサイコパス化する
確かに、ボクの上司もどちらかに分類できる人がたくさんいます
一度きりの人生だし、できればどちらにもなりたくないですね
具体的にどのような弊害があるのか?
私自身が経験したことや、実際に見てきた元上司の例を参考に解説します。
メンタルを病んでしまう
売りたくもない商品を売り続けることは想像以上にメンタルを消耗します。
なぜならそれは自分の価値観よりも会社の価値観を優先してしまっている状態だからです。
前の会社では毎年、営業部署から「鬱になって休職に追い込まれる人」が一定の割合でいました。
また、一度精神を病んで休職を経験した人は出世コースから外れ、中年になっても役職が上がらない人もいます。
メンタルを病んでしまう前に何かしらのアクションを起こしましょう
パワハラが横行する
なりふり構わずノルマを達成した人が評価される職場は往々にして殺伐とした雰囲気になります。
サイコパス化した人が出世して自身の成功体験を部下に押し付ける負のループですね
こうしてノルマ至上主義の営業部門はパワハラが常態化する危険性が高いです。
私が元いた会社では、成績の悪い営業が大勢のいる前で2時間・3時間延々と説教されたり、長時間残業させられたり、怒鳴られたりといったことが頻繁に起こっていました。
家族に見放される
厳しい営業ノルマを達成して出世したにも関わらず、家族との関係が上手くいっていない…
私が見てきた上司はそんな人ばかりでした。
「仕事だから」と割り切っているつもりでも、売りたくもない製品を売り続けると性格そのものが歪んでしまうリスクがあります。
そうなったときに最も被害を受けるのは、身近にいる家族です
同じ営業の先輩に「こんな人になりたい」と憧れを抱ける人がどれだけいるか?
これは、今の営業の仕事をこのまま続けて幸せになれるかどうかの一番分かりやすい指標です。
売りたくない製品を売る苦痛から解放されるには?
営業は他の職種と比較しても周囲のプレッシャーが強く、メンタルが消耗しやすい職種です。
特に、以下ような具体的な症状が出てきたらいよいよ危険な状態です。
- 日曜の午後になると月曜日に会社に行くのが嫌過ぎて憂鬱になる
- 仕事のことが頭から離れず明け方まで眠れない日々が続く
- 会社に向かう電車の中で理由もなく涙がこぼれる
「ノルマ達成するまで帰ってくるな!」と言われた友人はメンタルをやられて休職してしまいました
体調を崩す前に早めに周囲の同僚や上司、または産業医の先生に相談しましょう
売りたくない製品を売る精神的な苦痛から解放されるには「職種を変える」か「会社を変える」かの2択しかありません。
職種を変える
職種を変えるの最も手っ取り早い方法は部署異動を希望することです。
現場を知っている営業であれば営業企画、経営企画、マーケティングといった企画職で重宝される傾向があります。
また、英語が得意であれば海外関連の部署に異動すると環境が変わっていい気分転換になるかもしれません。
海外関連の部署を経験しておくと転職にも有利になります
営業から企画職に異動すると残業も減り、プレッシャーも一気になくなるのでおすすめです。
会社を変える
環境を変えるだけではなく今後の生き方をを抜本的に変えたい場合は転職を検討しましょう。
営業として市場の第一線で活躍していると、会社の将来性についても不安に思う部分が見つかるはずです。
明るい未来を描けない会社に居続ける理由はあるのでしょうか?
私は転職がなかなか決断できず、新卒で入社した会社にズルズルと居座ってしまいました。
でも、いざ転職してみるとそれまでの常識が一気に覆され「営業ってこんなに楽しいのか」と再認識できました。
何から手をつけていいのかわからない場合はミイダスのようなスカウト型の転職サイトで先ずは自身の市場価値を査定してみることをおすすめします。
関連記事
また、私と同じようにメーカー営業で苦しんでいる場合は私の経験が参考になるかも知れません。
メーカー出身者が転職にチャレンジするノウハウは以下の関連記事にまとめました。
関連記事
営業が自社製品を好きになれないときの対処法とめ
残念ながら私たちの周りにあるのは「本当に価値のある製品」を提供している企業ばかりではありません。
- 革新的な製品を開発し続けてきたか?
- 有能な経営者が会社の舵を握ってきたか?
- 胡坐をかかずに適切な投資をしてきたか?
これまで歩んできた歴史によって会社の価値は千差万別です。
「どの会社にいるか?」で仕事や人生の充実度は大きく変わります
終身雇用が崩壊した現代においては尚更「どこに身を置くか」が重要です
新卒のときとは違い、営業を数年経験した人には幅広い業界知識や製品知識が身についているはずです。
それらの知識・経験を利用して、「売りたくない製品を売る努力」だけでなく「本当に売りたい製品を会社の外に見つける努力」もしてみてはいかがでしょうか?
ユーザーに価値を提供して喜んでもらえる…
そんな営業冥利に尽きる仕事が意外と簡単に見つかるかも知れません。
コメント